077050 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

第6話

Femme de ma vie ~Homme de ma vie <6> 


ニースロケ当日は目立ったアクシデントもなく予定通りに撮影が進んでいた。
揺が遠目から撮影現場を眺めているとマダムボディエが声をかけてきた。
「撮影ははかどってますか?」
「あっ、おかげ様で無事に終えることができそうです。ご協力ありがとうございました。」
「テヨンさんのご紹介ですもの。これくらいお安い御用ですわ。でもだいぶ元気そうになって良かったわ。少し前は彼女を見ていると辛くて。昔はもっとはじけるように明るかったんですよ彼女・・・。ギジュさんとここにいらした時はとても可愛いお嬢さんで。」
マダムボディエが独り言のようにつぶやくのを聞いて揺は「カン・テヨン」の名前をどこで耳にしたのかようやく思い出していた。
「ギジュさんというのは韓国のGD自動車の社長をしているハン・ギジュさんですか。カン・テヨンさんは奥様ですよね。」揺は興奮して畳み掛けるようにマダムボディエに尋ねた。
「そうです。貴方ギジュさんをご存知なの?」
「ええ。ちょっとご縁があって。テヨンさん、弟さんの面倒をみにこちらにいらしたと伺っていますが・・今どうしておひとりなんですか?」
「何でその事情をご存知なの?」マダムボディエは驚いて揺に尋ねた。
自分でも驚くほど興奮していた揺は少し冷静になろうと大きく息をした後、自分とギジュが何故知り合いでどうしてテヨンについて知っているのかを簡単に語った。
「そうでしたか・・・。私も詳しくは。」
そういいながらマダムボディエは彼女の知っていることについてゆっくりと語ってくれた。
そもそも、テヨンがパリに戻ることになったのは彼女の手紙がきっかけだったということ。今、スヒョクは行方不明で今でも時折テヨンはスヒョクを探しているということ。テヨンはもうソウルには帰れないと言っていてマダムボディエにも詳しい理由は話さないこと。今まで何度か帰るように勧めたが無駄だったこと。
彼女が話せることはそれくらいだった。
「そうですか・・・」話を聞いた揺はそうつぶやいた。
「神様は一体私に何をしろというのだろう。」
揺は以前からギジュと二回も偶然に会ったことには何か意味があるのかもしれないと思っていた。そして揺はまた偶然にもパリでテヨンと出会った。マダムボディエとも。これが縁でなくて何だというのだろうか。ギジュはやはり揺の運命の人でなかった。むしろ彼らの運命の鍵を握るのが揺なのかもしれない。揺はテヨンとそのことについて直接話をすることを決意した。




「もしもし、ビョンホンですけどいつもお世話になってます。すいません。鈴木君お願いします。」ビョンホンは日本語でそう言った。
公的な場面では彼は日本語をほとんど口にしないが実はもうだいぶ話せるようになっていた。日本人スタッフと日本語で会話することもよくある。
電話先はジャパンオフィシャルファンクラブの事務局。
「もしもしヒョンですか?」電話口に出た智。
彼はビョンホンのオフィシャルサイトが立ち上がった時からのスタッフでビョンホンが来日した際も打ち合わせに参加したり一緒に食事に行ったりしていた。彼は在日韓国人三世なので多少ハングルが話せる。コミュニケーションに不自由しないから自然とよく話す兄弟のような仲になっていた。
「おう。元気じゃないんだって?俺のせいで大変な思いさせちゃったみたいですまなかった。」ビョンホンは申し訳なさそうに言った。
「いやっ、ヒョンのせいじゃないですから。僕が半端なこというから皆さん余計不安になっちゃったみたいで。ファンの皆さんにもヒョンにも迷惑かけちゃって反省してます。」
智は恐縮しながら言った。
「もう、懲りちゃったんだって?ワンコになるの。」
ちょっとからかうようにビョンホンは尋ねた。
「僕じゃまだ人生経験足りなくて・・役不足みたいです。」
「そんなこと言わないでたまには遊びに行ってあげてよ。皆喜ぶから。」
「ヒョンが行った方がもっと喜びますよ。」
「それは何か収集つかなくなりそうで怖いんだよね。いずれ機会を作ってデビューしようとは思っているんだけど。」ビョンホンは困ったように言った。
「お詫びにさ、一緒に遊びに行かないか?」
「どこへですか?」
「スノーボードしに。今シーズンまだ行ってなくて。どこがいいかな。そうだ北海道ってどう?あそこ雪いっぱいあるだろ?」
「えっ、ビョンホンさん、日本で遊ぼうなんて考えてます?まさか。」うろたえるダリチン智。
「うん。だって見つからないよ。サングラスしたりゴーグルしたり変装してさ。楽しいじゃん。どうせ揺はまだ帰ってきそうにないからつまんないし。行こうぜっ!」
すっかりその気のビョンホン。
「ヒョンがそういうならお付き合いしますけど。」ダリチン智は少し怯えながら答えた。
「じゃ、決まりなっ。明日から3日くらいでどう?予定空けてよ。じゃ、元気出せよっ!」
ビョンホンはそういうとさっさと電話を切った。
(明日?全くヒョンには驚かされることばっかりだ。)ダリチン智はつぶやいた。

「お~い!みんな~。明日から北海道行かない?」
電話を切ったビョンホンは事務所の真ん中で叫んでいた。



© Rakuten Group, Inc.